母に認知症の疑いが出始めたのは、今から20年ほど前の事ですね。母が60代になった頃でしょうか・・・
その頃、家に遊びに来た叔母が話してくれたのですが、うちの母が怪我したらしく腕に包帯を巻いていたので、どうしたのかを訪ねると「う~ん、わかんないのよね、いつの間にか怪我してるみたいで」という返事だったそうです。
え? 怪我したことを忘れてる??
父が言ったそうです、「最近、すぐ忘れるんだよ」と。
家で夕食を一緒に採っているといきなり母が「最近、頭が真っ白になってボーっとして何もわからない時がある」と言い出しました。
この言葉を聞いて私は、ははっきりとこれは認知症だな、と思いました。
この頃、叔母が来た時に怪我をしていたとき以外にも、時々体をぶつけたり転んだり、階段から落ちたりして怪我しているのに、そのあとになってなぜ自分が怪我しているのかわからないことが多くなっていました。
もちろん私は父に対しても、母を病院に連れて行かなければいけないことを強く言いました。
母は私が言っても聞かない人なので、父に頼んだのですが。
ところが父は世間体を気にして認知が入ってちょっとずつ風貌が変わって、おかしくなってきている母を誰にも知られたくなかったようで、病院の受診を拒み続けました。
そんな折、ちょうど弟の結婚式があったのですが、紋付の着物で出席した母が着物の袖でグラスを倒したり、袖を料理の皿につけて汚すなど、それまでにやったことのない失敗を繰り返すようになりました。
それを見た父はやはり、「何やってんだ!」と母に文句を言っていましたが、まさか認知症になるなんて思ってもみなかったのでしょう。
認知症の発症のし始めは、自分でも何となく自覚症状がある場合が多いようです。
自覚症状があるのですから、本人にとってとても不安なのだと思います。
だから、病院に行くのも怖がるんですね。
(うちの母の場合は昔から病院に行ったことのない人でしたが)自覚症状がある、心配な症状がある(物忘れが激しくなったなど)の場合は、勇気をもって専門医に診てもらうことが重要です!
今の医学でも、認知症は治らない病気です、残念ながら。
でも、症状の進行を遅らせることはできるのです。
それは投薬だったり、機能訓練だったりします。
少しでも認知症の症状を遅らせるために必要ですから、早めに専門医の受診をお勧めします。
私の母に認知症の疑いが出たあの頃、父がもっと協力的だったら・・・
父が協力してくれたら、何としてでも受診させたのに・・・
そう思うと今でも残念でなりません。
たとえば、嘘でも「老人健診だから市立病院に行こう」と言って老人病院に連れ出したりすることはできるはずなんですよ。
実際、母の認知症がかなり進んだ時には、この手で病院に連れて行きましたけど。
そばで見ている家族が、少しでもおかしな行動をとるのを見つけたらためらわずに受診させて下さい。
少しでも進行を遅らせることができれば、そのあとの治療にも期待が持てると思うのです。
また、認知症の人は人一倍プライドが高いのも特徴です。
高飛車に、上から目線でものを言ったり、反対に子供扱いしたりして、本人のプライドを傷つけないようにしたいものです。
病院に行くときも「精神科」「物忘れ外来」にではなくて、「健康診断」「成人病検診」と言って一緒に行くなどの工夫は必要だと思います。
本人の自尊心を傷つけずに家族が寄り添って通院できることが理想ですよね。